■ 済々黌黌歌解説
(注)この解説は、竹原崇雄先生の解説を引用して作成したものです。
1
碧落:青年の胸に抱く高い理想を象徴している。それは単に青空を仰ぎ見るのではない。果てしなく未来に広がる若者の生命の源泉を暗示している。
「碧落」について辞書には次のように記してある。「東方の天。転じて青空。『上窮碧落下黄泉』。黄泉とは死者の世界「奈落」を示す。亡き楊貴妃を追慕する玄宗皇帝のために修験者が上は「碧落」から下は「黄泉」の果てまで探したと白楽天は記している。青空の彼方に思い描く理想郷を目指して「我等の意気」は噴煙とともにたちのぼるのである。
2
同心:「同心其利断金」二人が力を合わせればその鋭利な切れ味は固い金をも断ち切る程のものになるの意。
赤誠:どんな固い「金石」でも貫き透す赤く燃える誠の心
筑紫:九州を意味するとともに前の「心」を受けて心を尽くすという掛詞となっている。
恩命一下:御下賜金を賜る栄誉に浴した。恩賜記念運動会はその「光栄を銘」して今も脈々と受け継がれている。
3
三綱領を基盤に、明治43年に井芹黌長によって八条目が制定された。その第一条に「清明仁愛剛健の三徳を修め、以て人格の完成をすべし」とある。黌歌の制定はその二年後である。
「碧万里」は大海原。「朝暾〜大海原」の情景は、熊本近代洋画を代表する画家青木彜蔵先生が当時済々黌の図画の教諭であった時に描かれた「朝暾の図」に依っている。
この太陽、海原、天空の一如となった姿こそ「宇宙の偉観」であり、汚れなき「清新の」趣きある情景そのものであり、それがそのまま「我理想」となる。
4
藤肥州:加藤清正を意味するとともに「東肥州」(肥後国)と掛詞となっている。藤は藤原家の流れを示している。
感公:細川家第八代重賢公を指す。名君の治世の恩沢の流れは今も風土の中に漂っている。
菊池一族の尽忠の精神は散る桜花と競って美しい。
「天地」の間の全てのものを我が師として学ぶ謙虚な姿勢を持して理想実現のために邁進しようではないかと歌い上げて結んでいる。